技術情報
プラスチックごみ問題解決に向けた生分解性プラスチックの活用
世界のプラスチックごみ問題
プラスチック製品は現代の私たちの生活になくてはならないものとなりました。
昨今、プラスチックのリサイクルやリユースといった環境に配慮した取り組みが積極的に行われていますが、その一方でプラスチック自体は毎年新たに生産され続けています。
2019年の世界のプラスチックの生産量はなんと4億6000万トン。
この膨大な量のプラスチックは使用された後どのように処理されているのでしょうか。
使用後のプラスチックは以下のような内訳になっています。
- マテリアルリサイクル・ケミカルリサイクル:14%
- サーマルリサイクル:14%
- 埋め立て:40%
- 回収されずに漂流:32%
ここで注目するべき点は、回収しきれずに環境中に流出してしまうプラスチックが32%もあるという事実です。
この32%のプラスチックごみの一部が海にも流れ込み、海洋プラスチックごみとなってしまいます。
地上や海に残ってしまうプラスチックは、時間とともに微細化して、「マイクロプラスチック」として残ってしまうことが問題視されています。
生分解性プラスチックとは
「生分解性プラスチック」とは、微生物の働きにより最終的に二酸化炭素と水に分解されるプラスチックのことです。
よく混同されて使われる言葉として「バイオプラスチック」や「バイオマスプラスチック」などもありますが、それぞれの定義は異なります。
「バイオマスプラスチック」は、植物などの再生可能な有機資源を原料とするプラスチックのことを指します。生分解性の有無は定義に関係ありません。
それでは「バイオプラスチック」とは何でしょうか?
「バイオプラスチック」とは、「生分解性プラスチック」と「バイオマスプラスチック」の総称です。
したがいまして、『環境対策としてバイオプラスチックを導入しましょう』と一口に言っても、そのアプローチはさまざまです。
例えば、二酸化炭素排出量削減に着目すると「バイオマスプラスチック」の導入がひとつのアプローチとなります。
あるいは、上記のような環境中に漂流するプラスチックごみ対策の場合は、「生分解性プラスチック」が有効なアプローチとなります。
生分解しないバイオマスプラスチックでは、プラスチックごみ問題の解決策とはなり得ません。
生分解性プラスチックの種類と課題
それでは、プラスチックごみの解決策となりえる「生分解性プラスチック」には、どのような種類があるのでしょうか?
代表的な生分解性プラスチックとしては、以下のような種類があります。
- PLA(ポリ乳酸)
- PHA(ポリヒドロキシアルカン)
- PGA(ポリグリコール酸)
- PBS(ポリブチレンサクシネート)
- PBAT(ポリブチレンアジペートテレフタレート)
いずれの樹脂もさまざまな分野で実績のある優れた生分解性プラスチックです。
それぞれの樹脂にメリット・デメリットがあり、用途に応じて使い分けられています。
しかしながら、上記の樹脂のいずれも、わたしたちの身の回りのプラスチック製品に大量に使われているわけではありません。
なぜでしょうか?
これにはいくつか理由があります。
- コスト……………現行樹脂の何倍にもなってしまう。
- 特性 ……………現行樹脂と異なる特性がどうしてもある。既存設備や金型を流用できない。
- 処理システム……使用後にリサイクルや生分解させるための循環システムが確立されているか、という問題。
いざ生分解性プラスチックを導入しようとすると、上記のようなさまざまな課題に直面することが多く見られます。
そのため生分解性プラスチックの導入には時間がかかるのです。
新たな視点の生分解性プラスチック
このように課題がありながらも、徐々に導入が進んでいる生分解性プラスチック。
本コラムの最後に、上記の課題に対して有効的な新技術をご紹介します。
- プラスチック自体の特性や成形性にほとんど変化がなく
- 従来の生分解性プラスチックほどの大幅なコストアップとはならず
- 通常のプラスチックと同様にリサイクルができ
- 自然環境に流出してしまっても、環境中で生分解される
そんな新技術が、実は既に開発・量産化されています。
いまお使いのポリエチレンやポリプロピレンに、この新技術を導入することで、ポリエチレンやポリプロピレンを含む全体が生分解性となるので、プラスチックごみ問題の有効な解決策として期待されています。
この新技術にご興味のある方は、以下のリンクで詳しくご説明していますのでご覧ください。