炭素繊維強化プラスチック材料|KyronMAX
KyronMAX(カイロンマックス)とは?
KyronMAX(カイロンマックス)は、Mitsubishi Chemical Advanced Materials Inc.によって開発された、非常に高強度の炭素繊維強化プラスチック材料です。
短くカットした炭素繊維を熱可塑性樹脂に練り込んだCFRP材料の一種で、炭素繊維強化コンパウンドとも呼ばれます。
熱硬化性CFRP(プリプレグ)やSMC(シートモールディングコンパウンド)などとは異なり、射出成形用のペレット材料ですので、複雑形状の成形品を大量に生産することが容易な点が特徴です。
KyronMAXは、特殊なコンパウンド技術と炭素繊維加工のノウハウにより、従来の射出成形用プラスチックよりも高強度・高剛性にすることができました。
引張強度で最高383MPaという、射出成形用プラスチック材料としては最高レベルの強度を実現した革新的な技術です。
具体的な比較としては、一般的なガラス繊維強化樹脂と比べて70%以上高い強度、一般的な炭素繊維強化樹脂と比べて30%以上高い強度となっています(引張強度で比較)。
従来のガラス繊維/炭素繊維強化プラスチックとの物性比較
一般的なガラス繊維強化プラスチックや炭素繊維強化プラスチックと機械特性を比較した一例を記載します。
異なるベース樹脂ごとに、引張強度を比較した例です。
それぞれ、薄いグレー色がガラス繊維30%、濃いグレー色が炭素繊維30%、赤色がKyronMAXの炭素繊維30%を添加した際の引張強度です。
KyronMAXでは樹脂とベース繊維の密着性を非常に高くすることで、従来の炭素繊維強化コンパウンド樹脂よりも高い機械特性を実現しています。
金属代替による軽量化が可能な高強度・高剛性
KyronMAXは機械特性に優れる樹脂材料なので、従来の樹脂材料では困難であった金属代替用途に多く展開されています。
アルミニウムやマグネシウムなどの金属材料に匹敵する優れた機械特性を備えています。
高強度でありながら、アルミニウムと比較して約40%、マグネシウムと比較して約30%比重が小さいので、部品の軽量化に大きく貢献します。
ガラス繊維強化樹脂と比較した場合、炭素繊維自体の比重は約1.8と、ガラス繊維の約2.5よりも小さく、また同程度の機械特性を発現させるために必要な繊維添加量が少なくて済むので、さらなる軽量化が期待できます。
一般的な射出成形機で成形可能なCFRP
長繊維を用いるCFRPの場合、コストが高かったり、形状に制限があったり、という課題があります。
その点、KyronMAXは熱可塑性樹脂をベースとしていますので、一般的な射出成形機での射出成形が可能です。
長繊維強化ペレットのように、成形が難しくありませんので、複雑形状の部品も成形することが可能で、量産化によるコストダウンが期待できます。
超繊維強化ペレット(LFT)との比較
KyronMAXは短繊維を用いており、長繊維強化ペレット(LFT)とは異なる技術です。
短い繊維を用いているため異方性が少なく、成形品のソリや歪みなどが生じにくく、扱いやすい材料です。
また、長い繊維が含まれている材料の場合、成形品のウェルドラインの強度低下が著しく、本来の高い機械特性を発現できないことがあります。
KyronMAXの場合、短い繊維を用いていますので、ウェルドラインの強度低下が比較的小さく、かつ他の短繊維強化プラスチックよりも優れた機械強度を示します。
KyronMAXのベース樹脂とグレード
KyronMAXは、ポリアミドやPPA、PC、PEI、PEEKなど、ベース樹脂の異なる複数グレードがございますので、用途や必要特性に適した材質をご選択いただけます。
市場ニーズに応じて新グレードも随時開発中です。
各グレードの物性表や成形条件表などもご用意しておりますので、ご希望の方はお問合せフォームよりご連絡ください。
ベース樹脂 | グレード名 | 引張強度(MPa) | 引張弾性率(GPa) | ガラス転移点(℃) | 融点(℃) |
---|---|---|---|---|---|
PA | S-2212 | 231 | 12 | 50 | 263 |
PA | S-2220 | 303 | 21 | 50 | 263 |
PA | S-2230 | 324 | 28 | 50 | 263 |
PPA | S-4230 | 383 | 34 | 118 | 311 |
高耐熱PPA | S-4330 | 348 | 32 | 135 | 305 |
KyronMAXの用途
KyronMAXは、革新的な材料ながら既に広く認知されてきており、様々な用途に採用されています。
- スポーツ・レジャー用品(自転車部品、釣り用具、アーチェリー部品、ゴルフ部品、等)
- 自動車部品
- 電化製品部品
- ロボット部品
- 医療機器部品
- ドローン部品
など、特にアルミニウムやマグネシウム部品の代替による軽量化を中心に使われています。
KyronMAXの動画
KyronMAXの製品概要を動画にて詳しくご説明していますのでぜひご覧ください。
超高強度 炭素繊維強化プラスチック・KyronMAXTM(カイロンマックス)の試験動画です
KyronMAXのカタログ
KyronMAXのカタログは下記リンクよりダウンロードください。
詳しい物性をお知りになりたい方は、お問合せフォームからお問い合わせいただくか、
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